調整屋
ももこ「みたま、飯作っといたぞ」
みたま「…ありがとう……」
ももこ「……」
みたま「……」
ももこ「……ほら、食った食った」
みたま「も、もがもが!…ぷはっ!もうっ!何するの!」
ももこ「こうでもしないと食べないだろ」
みたま「……」
ももこ「…こころを助けたい気持ちは痛いほどよくわかる」
ももこ「けどな、このままじゃあんたまで…」
みたま「……」
ももこ「…みふゆさんのこと、覚えてるだろ?」
みたま「!」
ももこ「あの時…みふゆさんは限界を越えた代償で…」
ももこ「…アタシはみたまにまでそうなって欲しくないんだよ」
みたま「……」
ももこ「もうあれから2年近く経つよな…フェイントホープの時…みたま死ぬつもりだったろ」
みたま「…さぁ…わからないわ」
ももこ「…今のみたまはあの頃とよく似てるんだよ」
ももこ「死に急いでる…それも罪悪感からな」
みたま「……私が未熟なせいで、こころちゃんを救えなかった」
みたま「今もこころちゃんの体内に呪いは残ってる…」
みたま「みんなが協力してグリーフシードを与えてはいるけど…」
みたま「日に日に穢れる速度が速まってきてる…」
みたま「今辛うじて生きているのも…奇跡なの…」
みたま「けど…このままじゃ…もう…こころちゃんは……」
ももこ「……わかってる」
みたま「だったら!少しでも早く打開策を見つけないとっ!!」
ももこ「………」
みたま「う…くっ…!」
ももこ「みたま……」
みたま「私…あの二人に自分を重ねてみていたの…」
ももこ「…十七夜さん…か」
みたま「どこか私達と似ていてね…だからずっと応援していたのよ…」
ももこ「…ああ」
みたま「特にまさらちゃんはね…私に色々相談してくれて…」
みたま「すごく嬉しかったの…調整屋じゃなくて“八雲みたま”を頼ってくれてるんだ…って…」
みたま「なのに…私…あの時まさらちゃんの様子がおかしいことは十分理解していたのに…」
み「まさらちゃんを止めることができなくて…だからっ…」
ももこ「…もうその話はいいだろ、みたまはこころのことで手一杯だったんだ」
ももこ「まさらのこと任されたのに何もできなかったアタシが悪いんだからさ…」
みたま「でもっ!まさらちゃんが最後に話した相手は私なのよっ!?」
ももこ「…仕方ないだろ」
みたま「それにっ!まさらちゃんの最期は…幻で私の姿をした魔女に…っ…!!」
ももこ「っ…」
みたま「あの時レナちゃんから託されたこころちゃんの魔力の中には…っ!まさらちゃんの魔力も少しだけ残ってたの!」
みたま「それで見てしまったの…まさらちゃんの最期の瞬間を……」
ももこ「……」
みたま「私が…私がまさらちゃんを刺して……」
ももこ「く…」
みたま「必死にこころちゃんの魔力を守ってるまさらちゃんを…私が…私がっ…!!」
みたま「動かなくなる最期の最期まで守り続けてたまさらちゃんをっ!私がっっ!!」
ももこ「みたまっ!!」
みたま「っ!」
ももこ「もういい…もういいだって…」
ももこ「あれはみたまじゃない…ただの幻なんだ…」
みたま「あの状況で私の幻を見るくらい…まさらちゃんは私を頼っていたの…」
みたま「なのに…私は……」
ももこ「……アタシは…もうこれ以上誰も失いたくないんだ」
みたま「私もよっ!だからこころちゃんを…っ!」
ももこ「こころのことを諦めるつもりはアタシだってないよ…けどな!」
ももこ「このままじゃお前まで死んでしまうんだよっ…!」
ももこ「アタシは“八雲みたま”に死んでほしくないんだっ!」
みたま「!!」
ももこ「調整屋じゃない…みたま…お前に…」
みたま「ももこ…」
みたま「……ええ、そう…よね…ごめんなさい…」
ももこ「いいや……」
みたま「……ご飯食べて…少し横になるわ」
ももこ「うん…ここ、置いとくからな」
みたま「ええ…」
ももこ「じゃあ、また後で来るから…」
みたま「……ももこ」
ももこ「……」
みたま「…本当に…ありがとう」
ももこ「…お互い様だよ」
みたま「いただきます…」
ももこ「ああ、ももこさん特製弁当だ、ゆっくり食べなよ」
みたま「ふふ…茶色ばかりで体に悪そうだわ」
ももこ「お前に言われたらおしまいだよ」
みたま「ふふっ…もうあれからずっと料理してないものね…」
みたま「またご馳走したいわ」
ももこ「ウォールナッツで鍛えてからな、今じゃこのはさんも立派な戦力なんだぜ?」
みたま「そうね…負けてられないわ」
ももこ「ああ、だから食って力つけなきゃな」
みたま「ええ…」
ももこ「…じゃ、またな」
みたま「うん…」
みたま「……おいしい」
レナ「どう?」
ももこ「なんとか食べてくれたよ」
レナ「そう…良かった」
ももこ「…レナの方こそ、あんまり無茶するなよ」
レナ「いいえ、私なら大丈夫。問題ないわ」
ももこ「……そっか」
レナ「私はパトロールに行くわ、ももこも休憩取りなさいよね」
ももこ「ああ…そうするよ」
レナ「じゃあ」
ももこ「……レナ…」
ももこ「……いつかまた…さゆさゆのイベント行こうな」
ももこ「あの頃みたいにさ……」
かえで「ももこちゃん」
ももこ「かえで…」
かえで「大丈夫だよ、レナのことは私に任せて?」
ももこ「うん…ごめんな…」
かえで「ところで、あいみさんが来てるの、今大丈夫?」
ももこ「……ああ、大丈夫大丈夫」
かえで「そっか、それじゃあ呼んでくるね」
ももこ「おう」
ももこ(あいみ…こころに何かあったのか…?)