さやか「んん……」

杏子「おい」

さやか「むにゃむにゃ……」

杏子「さやか」

さやか「すぴー…」

杏子「おいってば」

さやか「すやすや」

杏子「さやかー!」

さやか「さやさや」

杏子「起きてんだろ」

さやか「あはっ、バレた?」

杏子「バレバレだっての」

さやか「そっかそっか」

杏子「ああ」

さやか「…すやすや」

杏子「だから寝るなっての!」

さやか「だって暇なんだもーん」

杏子「暇とか言うなよ、せっかくの正月なんだし」

さやか「だってぇー、テレビ見飽きたしぃー、お腹一杯だしぃー」

杏子「食って寝たら太るぞ」

さやか「ぐっ…それを言われちゃあれだけど」

杏子「だから寝んな、起きろ」

さやか「でもなぁー」

さやか「なーんかやる気でないのよねー…」

杏子「なんでさ?」

さやか「だってさ、みんな各々盛り上がってるなか、あたしだけ暇なんだもん」

杏子「はぁー?」

さやか「まどかはさ、ほむらと出掛けるなんて嬉しそうに言うから『あたしも連れてってー!』」

さやか「なんて言えないし」

杏子「まぁついてった所でハブらるそうだしね」

さやか「仁美は恭介と一緒にいるっぽいからさぁ……」

杏子「そりゃ付き合ってんだからな」

さやか「わかってるけどぉ……」

さやか「んで、マミさんはなぎさ連れて福袋とか買いに行くらしいし…」

杏子「ならついてきゃいいじゃんか」

さやか「いいよ、福袋とか興味ないし、在庫処分だしー」

杏子「夢がねぇな…」

さやか「ふーんだ、どーせあたしには夢も希望もありませんよーだ」

さやか「だからふて寝してやる!」

さやか「あたしは一人なんだー!」

杏子「さやかは一人じゃないだろ」

さやか「えー?なんでー?」

杏子「いや、その…ほら、あたし…がいるじゃんか」

さやか「え?なに?きこえない?」

杏子「だっ!だから…だから!その……」

杏子「あたしが一緒に正月過ごしてやるよ」

杏子「ひとりぼっちは寂しいもんな」

さやか「杏子……」

杏子「さやか……」

さやか「まぁ、あんた家に居候してんだから、あたしと過ごすのは当然でしょ」

杏子「ちょっ…」

さやか「ん?」

杏子「そんなこと言うなよ!言うの恥ずかしかったんだからな!」

杏子「なにさ!なんか良い感じの雰囲気だと思ったのに!」

さやか「あはは、怒らない怒らない」

杏子「さやか!てめぇ!」

さやか「それともあれかー?杏子ちゃんはさやかちゃんと良い感じの関係になりたいのですかな?」

杏子「は、はぁ?ち、ちげーし!誰がさやかなんかと!」

さやか「あはは、冗談よ、冗談」

杏子「てめぇなぁ…」

さやか「ごめん、ありがと。元気でたわ」

杏子「たく…」

さやか「んじゃ、外出よっか?」

杏子「最初からそう言えよなー?」

さやか「ごめんねー」

杏子「ったく、仕方ねーな」

さやか「あははっ」

杏子「えへへっ」


さやか「ってことで来ました初詣!」

杏子「やっぱ人多いなぁ」

さやか「そりゃまぁ正月だしね」

杏子「初詣ってなにすりゃ良いんだっけ?」

さやか「えーと?御神籤引いたり、願い事したりじゃない?」

さやか「何か順番とか作法とかあるみたいだけど、気にしなくていいでしょ」

杏子「そんな適当でいいのかよ…まぁあたしもよく分かんないんだけどさ」

さやか「んじゃさ、御神籤引こうよ」

杏子「そうだな」

さやか「御神籤はどこだー!」

杏子「ちょっ、あんま目立つことすんなよ恥ずかしい!」



ほむら「!」

まどか「ほむらちゃん、どうしたの?」

ほむら「…ううん、何でもないわ」

まどか「そう?あっ、ほむらちゃん御神籤どうだった?」

ほむら「今からあけるところよ、まどかは?」

まどか「えへへ!じゃーん、大吉でした!」

ほむら「大吉!?おめでとう、まどか」

まどか「うん!」

ほむら「じゃあ私も……」

ほむら「あ」

まどか「ん?」

ほむら「………」

まどか「……あっ」

ほむら「……凶…ね」

まどか「だ、大丈夫だよ!ほら、わたしの御神籤と足して割ったら吉くらいにはなるから!」

ほむら「…ふふ、いいのよ、まどか」

ほむら「御神籤を足して割るなんてことはできないし…気持ちだけでも嬉しいわ」

まどか「うぅ…でも…でもね、わたし、ほむらちゃんとは御神籤でも一緒がいいな」

ほむら「え?」

まどか「悪いことがあっても、ほむらちゃんが一緒にいてくれたら」

まどか「辛さは半分になると思うし」

まどか「良いことがあったら、ほむらちゃんが一緒にいてくれると」

まどか「嬉しさも倍になると思うの」

ほむら「まどか…」

まどか「だから、わたしとほむらちゃんの御神籤は二人で大吉と凶をはんぶんこにしようよ」

ほむら「……うん、ありがとう」

まどか「えへへ!」

ほむら「まどか…!」



さやか「………」

さやか「いやさ、ラブラブなのは良いんだけど、場所を選びなさいよ」

さやか「あんたらすっごく目立ってるよ……」

さやか「黙ってれば二人とも綺麗で可愛いのに、もったいない」

杏子「さーやか、誰と話してんのさ」

さやか「んーん、一人言」

杏子「ふーん?でさ、御神籤どうだった?」

さやか「今からあけるところ、あんたは?」

杏子「へへん!見ろよ、大吉だったぜ、大吉!」

さやか「へぇー、良かったじゃん、あたしはーっと」

さやか「…げぇっ!凶!」

杏子「あー…」

さやか「あたしってやっぱついてない……」

杏子「まぁ気にすんなよ、所詮こんなの只の運試しみたいなもんだしさ」

さやか「でも、やっぱ気にするわよ……」

杏子「気にすんなってば。あたしといればあたしの運もさやかに分けてやれるし」

さやか「……」

杏子「…いや、だからさ。あたしの大吉の運をさやかに半分やる……つーか、その…」

杏子「とにかく!さやかはあたしと入れば大丈夫だって!だから元気だしなよ?」

さやか「……ふふっ」

杏子「な、なんだよ…」

さやか「あたしも、人のこと言えないかぁ」

杏子「え?」

さやか「ありがと、杏子」

杏子「!お、おう!」

さやか「じゃあ次は…あれ!何か願い事書くやつやろうよ」

杏子「ああ、いいよ」

さやか「何書こっかな…杏子は何書く?」

杏子「あたしは……」

さやか「ん?あたし?」

杏子「いや…よし、書いたぜ」

さやか「う、うん」

杏子「先に出してくから、さやかも書いときなよ」

さやか「はいはい」

さやか「あたしは…こうかな?」

さやか「えへへ」

杏子「さーやか」

さやか「うわっ?」

杏子「何書いたんだ?」

さやか「な、なんてことねぇって!出してくる!」

さやか「ふぅ…見られたら不味かったわ」

さやか「杏子は何書いたのな…?」

さやか「でも、勝手に見ちゃうのも悪いし…ん?」

さやか「これって…」

さやか「『君の側にいよう』」

さやか「『君は側でいつまでも』」

さやか「……まさか」

さやか「いや、深くは考えないでおこう」

さやか「よし、あたしのはこれでいっか」

杏子「さやかー」

さやか「ごめんごめん、でさ、あんたは何かいたの?」

杏子「あん?あたしは……あ、お菓子を腹一杯食いたいって」

さやか「はぁ?そんなの書いたの?」

杏子「悪いかよ、んじゃさやかは何書いたのさ!」

さやか「え?あたしは……世界平和」

杏子「は?んなこと書いてどうすんだよ」

さやか「良いじゃん世界平和」

杏子「もっとこう…あるだろ!」

さやか「あんたも似たようなもんじゃん」

杏子「似てねーし!」

さやか「似てるって!」

杏子「似てない!」



ほむら「……新年早々騒がしいわね」

ほむら「全く、見てるこっちが恥ずかしくなるわ……」

ほむら「…ん?これは……」

ほむら「『もう二度と置き去りになんかしない』」

ほむら「『そばにいてやるよ』」

ほむら「ふふっ…全く、見てるこっちが恥ずかしくなるわ」

まどか「ほむらちゃん、そろそろ帰ろっか」

ほむら「そうね、早くお父様の御節が食べたいわ」

まどか「うん、わたしも!パパの御節はすっごく美味しいんだよ」

ほむら「ふふ、楽しみだわ」




さやか「今度はショッピングセンターにきたー」

杏子「結局、ここにも来るんだな」

さやか「せっかくだし、何か買って帰ろうよ」

杏子「ああ」

さやか「さーて、何買おっかな」

杏子「……ん?あそこにいるのって」

さやか「あ、マミさんとなぎさだ」



マミ「ふふっ、たくさん買っちゃった」

なぎさ「荷物がたくさんなのです」

マミ「そうね、じゃあそろそろ帰りましょうか」

なぎさ「はいなのです」

マミ「なぎさはお年玉で何を買ったの?」

なぎさ「なぎさは奮発したのですよ」

マミ「奮発?何を?」

なぎさ「その…こ、これ!…なのです」

マミ「えっ?私に?」

なぎさ「う、うん…」

マミ「本当!嬉しい、ありがとう、べべ!」

なぎさ「だから、なぎさなのです」

マミ「何かしら…開けてもいい?」

なぎさ「は、はい」

マミ「わぁ、ティーカップ?」

なぎさ「は、はい…マミはいっつも、なぎさに美味しいご飯やケーキを作ってくれるから」

なぎさ「だから、これはその恩返し…なのです」

マミ「なぎさ…ありがとう、大切にするわ」

なぎさ「えへへ…」



杏子「へへ、マミのやつ良かったじゃん」

さやか「すっごく嬉しそうだね」

杏子「ああ、じゃ、あたしらは邪魔しちゃ悪いしさっさと買い物すませちまおうぜ」

さやか「そうね」



杏子「で、結局買ったのは福袋だけか」

さやか「あんたがご飯食べすぎてお財布が軽くなったんだから仕方ないじゃない!」

杏子「はは、悪い悪い」

さやか「まったくもー」

杏子「福袋ここで開けていこうぜ」

さやか「ここで?」

杏子「うん、別にいいじゃん」

さやか「仕方ないわねぇ」

杏子「へへ、何が入ってるかな」

さやか「どれどれー、お?マフラーかぁ」

杏子「手袋とかも入ってるな」

さやか「他は…なにこれ?ペット用の服?」

杏子「ペット飼ってないしな…キュゥべえにでもあげたら?」

さやか「それでいっか…後は…うーん…」

杏子「結局、使えそうなのは手袋とマフラーくらいか」

さやか「安物の福袋だったしね…杏子、あんたマフラーと手袋どっちが欲しい?」

杏子「え、なに?くれるの?」

さやか「うん、いいよ」

杏子「サンキュー、じゃあマフラー貰うわ」

さやか「んじゃ、あたしは手袋で」

杏子「っし、それじゃ帰るか」

さやか「うん、帰って炬燵でぬくぬくしよー」

杏子「ああ…って外寒くないか?」

さやか「た、たしかに…昼はそこまで寒くなかったのに…もっと厚着してくればよかったかも…」

杏子「さむっ…さっさと帰ろうぜ」

さやか「そうね……」

杏子「さむっ……」

さやか「……杏子」

杏子「あん?」

さやか「あんた、手が悴んでない?」

杏子「ん?ああ…そうだけど、別にたいしたことねぇよ」

さやか「でも、風邪なんか引かれたら魔獣退治に支障でるでしょ?」

杏子「大丈夫だって」

さやか「いいから、ほら。あたしの手袋片方あげる」

杏子「片方?」

さやか「いいから、つけて」

杏子「ああ…でも何で片方?さやかが両方使いなよ」

さやか「これでいいのよ、ほら」

杏子「え?」

さやか「手袋つけてない方の手を貸しなさいっての」

杏子「あ、ああ…」

さやか「ほら、こうやって手を繋げば」

杏子「あっ」

さやか「…あ、暖かい…でしょ」

杏子「……えへへ、そうだな」

さやか「えへ……」

杏子「じゃあさ、マフラーもこうすりゃ」

さやか「わわっ?」

杏子「あ、暖かい…じゃん?」

さやか「…うん」

杏子「へへっ…」

さやか「じゃ、帰ろっか」

杏子「ああ」

さやか「………」

杏子「………」

さやか「……ねぇ、杏子」

杏子「お、おう…」

さやか「やっぱ、あたしの御神籤、凶で合ってたわ」

杏子「…はぁ?」

さやか「さ、帰ろ帰ろ!」

杏子「え?意味わかんねーよ!あたし何かしたか?」

さやか「さぁねー?」

さやか(たしかに凶だよ、きょう…漢字が違うけどね)

さやか(あたしの御神籤は『杏』だからね!)

おわり