そして当日

こころ「……」

こころ母「それじゃあお母さん達、先に行ってるわね」

こころ父「みんなと仲良くな」

こころ「……」

こころ父「…こころ」

こころ父「お前は父さん自慢の娘だ…」

こころ父「二人で暮らしてた頃…お前に冷たく当たってしまって…本当に悪かった」

こころ「……」

こころ父「あの頃は父さんも荒れてて…大事な一人娘のお前に当たるなんて…本当にバカだった…」

こころ父「でもな…あれでも…父さん唯一の生き甲斐が…こころ、お前だったんだ…」

こころ父「疲れて家に帰ったら…こころが家事をしてくれていて…」

こころ父「こころの手料理は…最初こそ母さんにはかなわなかったのかもしれないけど…」

こころ父「父さんにとってはこの上ない御馳走だったんだ…」

こころ「……」

こころ父「日に日に上達していって…本当に美味しくてな…」

こころ父「だからたまに作ってないと…がっかりして、それで…」

こころ父「……本当にすまなかった」

こころ「……」

こころ父「…こころに好きな人ができたって気づいた時は…ショックだったな…」

こころ父「どんな男なんだって…会ったらガツンと言わなきゃなって思ってた…」

こころ父「そしたらまぁ綺麗な女の子でな…驚いたよ」

こころ父「でも納得もしたよ…まさらちゃんは母さんにどこか似ていてな」

こころ父「俺の娘なんだなって、思ったよ…」

こころ母「もう…こんな時に何言ってるのよ……ぅ…」

こころ「……」

こころ父「まさらちゃんが遊びに来た時は父さん緊張しちゃってな…」

こころ父「娘の恋人の前でカッコ悪いとこ見せられないなんて思って…」

こころ父「色々かっこつけたけど…逆にダサかったよな…」

こころ母「ふふ…ほんと…出会った頃を思い出したわ…」

こころ母「父さん、あの頃から変わってないんだから…」

こころ父「ああ…そうだな…」

こころ父「でも…こころは…こころはっ……」

こころ父「くっ……!!」

こころ「……」

こころ父「……こころ、今まで本当にありがとうな」

こころ父「父さん…生まれ変わってもまた、こころの父さんになりたい…」

こころ父「本当に…本当にありがとう…こころ、愛してる」

こころ「……」

こころ父「……母さん」

こころ母「ええ…」

こころ母「こころ…バカなお母さんで…ごめんね…」

こころ母「いくらお父さんと上手くいかなくなったからって…最愛のあなたを置いて出てしまうだなんて…」

こころ「……」

こころ母「…家を出た後も、あなたのことを想わなかった日は一度もないわ…」

こころ母「何度会いたいと思ったか…けど合わせる顔がなくて…だから……」

こころ母「…そんな時、自分でもわからないのに家に戻って…」

こころ母「何故かわからないまま…昔のように戻ったわ…」

こころ母「でも心は戻ってなくて……」

こころ母「…まさかそれが…こころの魂の代償だったなんて…っ…」

こころ父「母さん…」

こころ母「ごめんなさい…ごめんなさいっ…」

こころ母「何もかもお母さんがいけないの…お母さんが全部っ…」

こころ「……」

こころ母「代われるなら今すぐ代わりたい…私が魔法少女になれるなら今すぐなりたい…!」

こころ母「キュゥべえ!聴こえていたらでてきてっ!こんなおばさんの魂なんていくらでもあげるからっ!!」

こころ母「だから…だからっ!こころは…こころだけは…」

こころ母「うっうっ…うぅぅぅぅぅ…」

こころ父「母さん…」

こころ「……ぶ…」

こころ父「!」

こころ「…ぃ…じょ…ぶ…」

こころ母「こころっ…」

こころ「…しあ…せ…っ…た…」

こころ母「私もよっ!私もあなたの母親になれて幸せだった…」

こころ母「生まれ変わったら…今度こそあなたの立派な母親になりたい…」

こころ父「父さんもだ…」

こころ父「なぁ…こころ…もし…もし、生まれ変わったら…」

こころ父「また…父さんと母さんの娘になってくれるか…?」

こころ「…ぅ…ん……」

こころ父「っ…!ありがとう…ありがとうぅっ…!」

こころ母「こころ…こころっ…ぅぅぅ…」

こころ「……」



あいみ「こころ…」

隼人「粟根さん…立派だよな」

あいみ「うん…私自慢の親友だよ」

隼人「ああ…そうだな」

あいみ「私も生まれ変わったらまた、こころの親友になりたいよ…」

隼人「うん…」

隼人「!」

こころ父「あいみちゃん、隼人くん、後は頼んだよ…」

こころ母「うぅ…うぅぅっ…」

隼人「はい、任せてください…あいみ」

あいみ「うん…では、また後で」

こころ父「うん…最後まで…毎日ありがとう」

あいみ「いえ…力になれなくて…すみませんでした…」

こころ父「そんなことないよ、君たちには本当に感謝してる」

こころ父「本当に…本当にありがとう」

あいみ「…こちらこそ…」

こころ母「うっ…うぅぅっ…」

こころ父「では、また…」

隼人「はい…」

あいみ「………」

隼人「さ、あいみ…」

あいみ「うん……」ゴシゴシ

あいみ「……こころっ♪」

こころ「……」

あいみ「もうみんな準備できたよー、後はこころだけっ!」

こころ「……」

あいみ「ってことで!おめかししなきゃだね!いっぱいいっぱいおしゃれしよう!」

あいみ「まずは髪切ろっ?私この日のためにいっぱい練習したんだよ?」

あいみ「今の超ロングのこころも大人の雰囲気あっていいけど、やっぱりこころはあの髪型が一番だよ!」

こころ「……」

あいみ「だからさ…切ってもいいかな?」

こころ「……」コク

あいみ「!…ありがと!それじゃあ張り切って切るからね!」

こころ「……」

あいみ「見慣れた超ロングのこころとはさよなら、だね…」

あいみ「…ふふ、こうして見るとほんと美人になったよね」

あいみ「もしかしたらまさらより美人かもよ?」

こころ「……」フリフリ

あいみ「あはは、まさらは世界一の美人だもんね」

こころ「……」コク

あいみ「じゃあこころは世界一可愛くならなきゃ!大丈夫!あいみ先輩におまかせっ!」

あいみ「って同い年か!あははっ」

こころ「……」

あいみ「はは…っ……」ゴシゴシ

あいみ「じゃ!切っていくよー!」



隼人「あいみ……」

隼人(俺がもし女子だったら…今すぐ契約するのに…)

隼人(なんで男はダメなんだよ…第二次成長期の女限定とかふざけやがって…!)

隼人(糞っ…糞っ…!!)

隼人(どうしてこんなことになるんだ……!)