アリナ「……アリナは……」

十七夜「君が画伯を連れ戻すんだ…!」

アリナ「……インポッシブル…」

十七夜「なに?」

アリナ「アリナには…できない……」

十七夜「……何故だ?」

アリナ「だって…アリナは…アリナは…」

十七夜「……」

十七夜(まだアリナがウワサに取り付かれていた時…彼女が感じていたのは孤独感)

十七夜(そして画伯への隠しきれない感情だった)

十七夜(簡単に言えば、アリナは画伯に恋をしている)

十七夜(だがそれを本人は否定し、拒んでいる)

十七夜(ああ見えても、自分のしていることに多かれ少なかれ罪悪感があるのだろう…)

十七夜(普段はどうやらそう言った部分を全く見せていないようだが)

十七夜(画伯といる時だけはそうでもないようだからな…)

十七夜(画伯とメイド喫茶もそうだ、必ず自分に対する嫉妬と対抗心を剥き出しにしてくる)

十七夜(最初こそ自分も戸惑いはしたが、すぐに理由はわかった)

十七夜(アリナは画伯を独占したいのだろう…だがそれができずに日々悶々としていたようだ)

十七夜(その負の感情をウワサにつけ込まれ、こうなってしまった…)

十七夜(ならば…今はどう考えている…)

十七夜(残された魔力は極微量だが…悪いが覗かせてもらうぞ)

アリナ『アリナの…アリナのせいだ…』

アリナ『アリナのせいで…こんなことに…』

アリナ『みんな倒れてる…死んじゃったのかもしれない…』

アリナ『アリナの邪魔する魔法少女ばかりだけど…』

アリナ『こんなの望んでない…美しくともなんともない…』

アリナ『こんなの…ただの残虐行為だから…』

アリナ『それに……』

アリナ『フールガール……』

アリナ『底抜けに明るくて…バカで…そして優しい…』

アリナ『そんなあの子がこんなこと望むわけがない…』

アリナ『誰よりも嫌がって…負けるとわかってても立ち向かうはず…』

アリナ『それなのに…アリナのせいで…』

アリナ『あんなバケモノに……』

アリナ『もう誰も止められない……』

アリナ『あと数分もすれば…ここにいる全員が殺される…』

アリナ『アリナのせいで…みんなが死ぬ…』

アリナ『アリナのせいで…フールガールが…消えてしまう…』

アリナ『アリナのせいで…アリナせいで…』

アリナ『ごめんなさい…ごめんなさい…』

十七夜(………)

十七夜(これは…驚いた…これが素のアリナなのか…?)

十七夜(それとも心が折れたからか…?)

十七夜(……どの道…自体は深刻だな…)

十七夜(今のアリナでは画伯を連れ戻すことはできない…)

十七夜(なんとかしなくては…)

アリナ「……」ウルウル

十七夜「っ…」

十七夜(まさかアリナの泣き顔を見る日がくるなんてな…)

十七夜(てっきり死ぬときもあの狂喜的な笑いで最期を迎えそうなイメージだったぞ…)

十七夜(どんなに魔法少女としてもアーティストとしても天才とは言え…)

十七夜(中身は16…と言うことか…)

十七夜「……アリナ、このままでは神浜はおろか日本…いや、世界の危機だ」

アリナ「っ…わかってる……」

十七夜「それも画伯の体を使ってだぞ…」

アリナ「…しゃらっぷ…」

十七夜「このままで良いのか!画伯を助けたくはないのか!?」

アリナ「…シャラップ」

十七夜「画伯を救えるのはアリナ・グレイ…君しかいないんだ!」

アリナ「シャラップ!シャラップシャラップシャラップ!!」

アリナ「シャラーーーップ!!!」

十七夜「悪いが、この身が朽ち果てるまで黙るつもりはない」

アリナ「ウザいんですケドォ!!」

十七夜「悔しいが自分では画伯を救うことはできん」

十七夜「君しかいないんだ」

アリナ「ハァ!?フールガールはアナタのこといつもリスペクトしてるんだケド!?」

アリナ「いっつも楽しそうにアナタの話するカラ!」

十七夜「なら画伯がいつも楽しそうに話す人物が相応しいと言うわけか」

アリナ「フンッ…そうだケド」

十七夜「ならやはりアリナ・グレイ、君しかいないな」

アリナ「ハァ!?」

十七夜「最近はいつも二人でくるから知らないのだろうが…」

十七夜「画伯は一人でくる時、必ず君の話をする」

アリナ「…!」

十七夜「いつもいつも楽しそうに『先輩』の話をしていた」

アリナ「…」

十七夜「言わば自分はその『先輩』の話を聞き手みたいなものだ」

十七夜「誉められたこと、怒られたこと、学んだこと、話したこと、イチゴ牛乳を飲まれること」

アリナ「……」

十七夜「まだまだあるぞ、『真剣にスケッチを眺めてる横顔がカッコいい』」

アリナ「っ?」

十七夜「『不意に見せる柔らかい表情が可愛い』」

アリナ「ハァ!?」

十七夜「『バレないように自分をチラ見してるみたいだけどバレバレで可愛い』」

アリナ「!!?」

十七夜「『休みのふりして部室でこっそり除いてる時いつも寂しそうで可哀想可愛い』」

アリナ「な…!?」

十七夜「『怪盗きりんの新刊をわたしより楽しそうに読んでて可愛い』」

アリナ「なななな!?」