翌日

放課後

あやめ「………」

あやめ(昨日のは悪い夢だった…でも、あちし…わかるよ…)

あやめ(このはと葉月が、あちしに何か隠し事してるって…)

あやめ(前から変だなーって思ってた、二人がちょっと変わったって言うか)

あやめ(あちしだけ仲間外れにされてるような…)

あやめ(嫌な感じがして…だからあちし…あんな夢を…)

あやめ「はぁ…」

フェリシア「んあ?ため息なんてめずらしーじゃん」

かこ「どうかしたの?」

あやめ「フェリシア…かこ…あちし…あちしっ…」

フェリシア「?」

かこ「…何かあったんだよね?良かったら話してみない?」

―――

かこ「……なるほど」

フェリシア「あー…?」

あやめ「あちし…二人が遠くに行っちゃいそうな気がして…」

かこ(…なんとなく、わかっちゃった)

かこ(このはさんと葉月さんは…)

フェリシア「なんかオレもそれ知ってるような…」

あやめ「え?フェリシアも?」

フェリシア「父ちゃんと母ちゃんじゃなくて…そうだ!いろはとやちよだ!」

かこ「!!」

あやめ「あの二人が?」

フェリシア「そうなんだよ、なんかあの二人たまに様子がおかしくなるんだよなー」

フェリシア「聞こうとしても、さなに邪魔されるし」

フェリシア「鶴乃に聞いてもちゃっちゃーってしか喋らないし」

フェリシア「ういはずっと笑ってるし、ぜってー知ってる!」

フェリシア「もうめんどくせーから気にしないことにしてたんだよ、今思い出した」

フェリシア「ぜってーオレ何か隠されてる!」

かこ「あ、あはは…」

あやめ「フェリシアもなんだ…なんなんだろ…」

フェリシア「よし!決めた!オレ今日暴いてやる!」

フェリシア「だからあやめも暴いてやれよ!」

あやめ「!」

かこ「う、うーんと、それはやめておいた方が良いような…」

フェリシア「いややる!今日はういとさなが、白いねーちゃんの見張りに行ってて邪魔がいないしよ!」

かこ「見張り?」

フェリシア「勉強したくねーっていつも脱走してるらしいぞ」

かこ「あぁ…」

フェリシア「とにかくオレはやる!だからあやめもやれよな!」

あやめ「わかった…あちしもやる!」

かこ「んー…」

かこ(どの道いつかは気付くと思うし…止めなくてもいいかな…?)

かこ(むしろ、二人がそれを知って…)

かこ(私とフェリシアちゃん…私とあやめちゃん…フェリシアちゃんとあやめちゃんも…)

かこ(ううん!むしろ三人とも……)

フェリシア「あ?かこのやつなんでニヤニヤしてんだ?」

あやめ「やってやるかんなー!」



このは「あやめ、もう夜も遅いしそろそろ寝ないと」

あやめ「起きてる!」

葉月「何かあるの?」

あやめ「うん!」

葉月「テレビ?」

あやめ「ううん!」

このは「なら…配信?」

あやめ「ううん!」

葉月「なら何があるの?」

あやめ「わかんない!」

このは「?…友達と何かする?」

あやめ「え?うーん、フェリシアもするって!」

葉月「へぇ?やちよさんなら『早く寝なさい』って言いそうな気もするけど…」

このは「…まあ、たまにはいいと思うわ」

葉月「ん、そだね」

このは「じゃあ、私と葉月は先に眠るわ」

葉月「もし何か食べたら、ちゃんと歯磨きして眠るんだよ」

あやめ「わかった!」

このは「それじゃあ、おやすみなさい」

葉月「おやすみー」

あやめ「おやすみ!」

あやめ(よーし!)

あやめ(二人とも、あちしがいない時にコソコソしてるもん!)

あやめ(だからこっそり部屋を覗き見してやる!)

寝室

このは「ふふ、あやめも夜更かしがしたくなる年頃なのかしら」

葉月「アタシらもあれくらいの頃って無駄に夜更かししたかったよねぇ」

このは「ええ、でも園長先生に叱られるのよね」

葉月「優しくね」

このは「……懐かしいわね」

葉月「うん……」

このは「……私達は普通とは違う人生を歩んでいるのかもしれない」

このは「でも…私は、これで良かったと思ってるわ」

葉月「…アタシもだよ、アタシ達は昔も今も…そしてこれからも、普通とは違うのかもしれない」

葉月「けど、後悔なんてしてないよ」

葉月「つつじの家があったから、あやめと、そしてこのはと出会えた」

葉月「つつじの家に来たばかりのアタシには何もなかった」

葉月「何もかもが空っぽだった、でも…このはがいてくれた」

葉月「辛いこともたくさんあった…」

葉月「あやめの前では弱いアタシを見せるわけにはいかない…」

葉月「あの子は本当に小さい頃からアタシ達の側にいたからね」

葉月「そんなに年齢が離れてるわけじゃないけど…アタシはあやめのお姉ちゃんじゃなくて」

葉月「お母さんにならなきゃ、って昔から思ってた」

葉月「…変だよね、アタシもまだまだ小さい子供だったのにさ」

このは「いいえ、私もよ…葉月と一緒」

このは「不思議とあやめは最初から私とこのはになついてくれたわ」

このは「だから守らなきゃ、と誓ったのよ」

このは「あの子だけは何があっても守り抜く」

このは「この気持ちは今も昔も変わらない」

このは「あやめを…そして葉月、あなたを守る」

このは「これが私の変わらない気持ちだった」

このは「でも…変わってしまった」

このは「私にとって、あなたは…守る対象ではなくなったのよ…」

葉月「…うん、アタシも変わったからね」